タイガー&ドラゴン「三枚起請の回」

タイガー&ドラゴン「三枚起請の回」池袋ウエストゲートパーク』の長瀬智也と『木更津キャッツアイ』の岡田准一竜虎にらみ合う共演に、脚本家・宮藤官九郎がしつらえた仕掛けは何と古典落語の世界!暴力団員の虎児(長瀬智也)は落語家の林屋亭どん兵衛西田敏行)から借金を取り立てるはずが、どん兵衛の話芸に魅せられて弟子入りを決意。拒むどん兵衛に虎児が提案したのは、金の代わりに落語の芸を1個10万円で取り立てることだった。ところが虎児の話は自他共に認めるほどおもしろくない。見兼ねたどん兵衛は落語家としての将来を嘱望されていたにもかかわらず、現在は裏原宿でショップをやってる二男・竜二(岡田准一)を紹介する。
落語の演目「三枚起請」をモチーフに、洒落が効かないヤクザの世界を描くあたりのギャップもケッサクだが、笑いにではなくリリックに下げるあたりはまさにクドカン節の極みと言えよう。古典の廓話が、男を手玉に取るキャバクラ嬢・メグミ(伊東美咲)の登場によって踏襲されているあたりも真摯かつ粋でオツ。(麻生結一)