Little Boy: The Arts Of Japan’s Exploding Subculture

Little Boy: The Arts Of Japan's Exploding Subculture 『Little Boy』は、アートと大衆向けビジュアルメディアという観点から、戦後の日本文化を検証している。村上隆と本書の著名な寄稿陣は、若者主導の「オタク」現象(大雑把に言えば「マニア文化」あるいは「ポップなカルト的熱狂」といったところ)にスポットを当て、日本の現代美術とその独特な絵画的言語を形づくった複雑な歴史的背景を読み解いている。本書のタイトル「リトルボーイ」は、1945年に広島に落とされた原子爆弾にちなんだもの。これは明らかに、前述のような新しい文化形態の原点が、原爆のトラウマとその世代的な余波にあることを暗示している。

本書は、豊富な図版をまじえながら、主要な「オタク」アーティストやデザイナー(うち多くはマニアの間で絶大な支持を得ている)の作品を紹介し、彼らの長編アニメ映画やビデオアニメーション、ビデオゲーム、インターネットサイト、音楽、玩具、ファッションなどを論じている。その過程で、次のような疑問が提示される――オタクとは、何か? 現代日本、そして世界全体の社会的・経済的・文化的生活の何を象徴しているのか? 日本のポップカルチャーに歴然と見られる「キュートさ」への蔓延的かつ奇妙な執着に、オタクはどう関係しているのか? 第2次大戦の原爆の惨禍は、日本の芸術と文化の発達にどのような影響を与えたのか?

デザインも秀逸な2か国語(英/日)の本書は、こうしたテーマを検証しながら、現代日本のアートが、漫画やアニメ(ジャパニーズ・アニメーション)に代表されるサブカルチャー界――異常に細密なテクニックや黙示録的なイメージ、そしてハイカルチャーとローカルチャーが混じりあう世界――と分かちがたいものになっていく過程を掘り下げている。

本書『Little Boy』は、村上隆の「スーパーフラット」トリロジーの締めくくりといえる。「スーパーフラット」は村上隆の提唱するコンセプトで、2000年にはこのコンセプトをもとに、日本アーティストのニューウェーブを紹介し、その作品を伝統的な形と概念に基づく歴史的文脈で捉えるための展覧会が開かれた。