機動戦士ZガンダムIII -星の鼓動は愛-

機動戦士ZガンダムIII -星の鼓動は愛- 85年から1年間オンエアされた『機動戦士ガンダム』の続編を、テレビとは異なる結末を見せることを前提に再構築した映画版3部作の完結篇。エウーゴティターンズの地球をめぐる内戦に旧ジオン軍アクシズが新たに加わり、三つ巴の戦いが繰り広げられていく中、主人公の少年カミーユは過酷な戦闘で心傷つきながらも確実に成長していく。TV版では悲劇に終わった彼の顛末も、映画版では一見予想されうるハッピーエンドを迎える。しかし、その奥には共同体の中に生きる男女の営みを祝福する富野由悠季監督の未来への希望が見事に込められている。こうしたメッセージは20年前の富野作品には見られないものであった。そこをどう捉えるかで映画版3部作の評価もおのずと変わっていくことだろう。TVの旧画と映画用の新画が交錯していく構成はギクシャクしてはいるが、そこから20年前と今との対比から未来を見据えようとする意思が巧みに醸し出されている。(増當竜也