パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド 2-Disc・スペシャル

パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド 2-Disc・スペシャル・エディション 「海賊映画」を復活させた大ヒットシリーズ3部作の完結編は、過去2作と違う味わいが残るだろう。これまでの作品は、わりとシンプルなストーリー運びで、登場人物たちの意図も明快であった。この3作目は、それぞれに秘められた思いが複雑で、しかも一瞬のセリフや表情を観逃すと分かりづらい部分もあるので、2度、3度と観てフォローしたくなる。観る側としては納得のいなかい気分にもなるが、何度も観たくなるというのは、もしかしたら名プロデューサー、ジェリー・ブラッカイマーの策略かもしれない。
ジャック・スパロウ救出の物語は、新登場の海賊長サオ・フェンが暗躍するシンガポールに始まり、アジアンテイストの衣装や武器、海賊船が見どころのひとつになる。「デイヴィ・ジョーンズの海の墓場」で何十人も登場するジャックや、海の大渦巻きの中での海賊船バトルなど、今回も驚きの映像が詰まっているのは確か。9人の「海賊長」がそろうシーンも圧巻だが、ジョニー・デップが役作りの見本にしたキース・リチャーズが特別出演し、わずかな出番で場をさらうカリスマ性を発揮している。あれこれあって迎えるラストは、1作目の冒頭とリンクしているようで、シリーズファンは妙に懐かしい感慨に耽るだろう。エンドクレジット後のシーンは別にして、3部作を終えるにはふさわしい結末であると思う。(斉藤博昭)